ケーススタディ
HP Site Flowのアーキテクチャは、コンテナ化の使用によって、需要に応じた迅速なスケール アップとスケールダウンが可能です。Mako™はこのアプローチの鍵で、PDF処理性能を低下させることなく、メモリとリソースのフットプリントを小さく抑えます。Mako also proved its capability and adaptability by rising to HP Site Flow’s development challenges, resulting in increased productivity and profitability for its users.
課題
HP Incは、HPデジタル印刷機の所有者向けに使いやすい製造実行システムであるHP Site Flowの開発を始めると、すぐに次のようないくつかの課題に直面しました。
パーソナライズされた市場の成長
業界標準のファイル形式はPDFであったため、HPはオープンソースソフトウェアをベースにした独自のソリューションを構築しました。しかし、メタデータの抽出、バーコードの追加、サムネールの作成など、顧客の新しい要件が特定されるにつれて、急速に要件に対応できなくなりました。HPは、PDFの処理に、信頼できるメーカーによる信頼性の高い多機能のソリューションを必要としていました。最初に使用されたのはAdobe® PDF Libraryでした。当初は問題ありませんでしたが、要件を満たしていないことがわかりました。Adobe PDF Libraryは製品更新サイクルが長いため、コードの修正が必要なサポートの問題がリリースに存在ことが判明するまでに数ヵ月かかることがあり、プロジェクトの遅れにつながりかねませんでした。また、AdobeのLinuxサポートはコンテナ化に求められるほど軽量ではなく、スケーラビリティに影響を与えました。
PDFはどれも同じであるとは限らない
パーソナライズ化は、システムで使用されるファイルの品質にも大きな変化をもたらします。ユーザーはPDFの作成に多様なツールを使用しているからです。そのため、HP Site Flowでは、印刷前にPDFを「ノーマライズ」する必要がありましたが、これは印刷プロセスの速度低下につながりました。
サイズの大きいPDFファイルの高速印刷
大量印刷に重点を置いており、内容の異なる大容量のファイルを印刷する必要があるHP Site Flowには、大規模なPDFファイルを処理できる機能が必要でした。サイズの大きい文書がPDF形式でプリンタに送信された場合、サイズと複雑さのために印刷に時間を要することがあります。その結果、PDF文書をリアルタイムでレンダリングするためにすべてのプリンタメモリが使用されると、ボトルネックが発生し、プリンタの速度の低下につながる可能性があります。
迅速な拡張が可能
システムは自動で迅速に拡張できる必要があります。処理する注文は1日に100件、10,000件、100,000件にのぼる可能性があり、しかも印刷ジョブは効率的かつタイムリーに処理しなければなりません。
重要な事実
- HP Site Flowは、HP Indigo 10000およびHP PWIデジタル印刷機と完全に統合されたHPのクラウドベースプラットフォーム、PrintOSを通じて利用できる製造実行システムです。
- HP Site Flowを使用すると、印刷サービス業者は大量の注文を簡単に管理できます。注文を受け付け、印刷用の生産バッチにグループ化し、異なる住所に送付するためにバッチを解除して、配送業者と連携することができます。
- HP Site Flowのターゲットは、ユーザーが1日に数十万件の注文を処理することがあるパーソナライズされた市場です。注文、請求、出荷の機能が統合されていて、顧客アカウントの設定やレポートの作成も可能です。また、短期的でパーソナライズされた大量のジョブを、送信から出荷までエンドツーエンドで管理します。
Nir Gilon, Cloud Engineering Manager, HP Inc“Mako proved its capability and adaptability by rising to HP Site Flow’s development challenges, resulting in increased productivity and profitability for its users.”
ソリューション
そこでHPはMako™を選択しました。Makoは、プリフライトオプションを提供し、PDFを効率化するGlobal Graphics SoftwareのSDKです。HP Site Flowは、Makoを使用して、PDFを取得し印刷に適したものにするプロセスを管理しています。Makoは文書を分析し、必要な消耗品(トナーや用紙の在庫量など)を算出します。
HPの主任技術アーキテクト、Andrew Gits氏はこう述べています。「MakoはLinux上で動作し、豊富な機能を備えていました。そのため、すぐに立ち上げて稼働させることができました。非常に軽量なラッパーを作成して、プリミティブなレベルでNode.jsから使用できるようにしました。これはAdobe PDF Libraryでは簡単にはできなかったことです」
Gits氏は次のように続けます。「Global Graphicsは早い時期からAlpine Linux上でのシステムの実行を支援してくれました。当社はすべてをコンテナ上に構築し、常時コンテナをデプロイしているので、非常に助かりました。実行時にUbuntuなどとAlpineが異なる点は、Ubuntuはコンテナあたり数百メガバイトになりますが、Alpineは数十メガバイトであることです。ですから、PDFレンダリングを行うための非常に軽量なコンテナを構築することができました」この効率性により、HPはコンテナの起動時間を短縮し、1台のホスト上で実行できるコンテナを増やすことができたため、拡張性が向上しました。
HPは、Makoの潜在能力を引き出すために、次のような新機能を導入することをGlobal Graphics Softwareのチームに委託しました。
ストリーミングのサポート
HPは、PDF全体をダウンロードする必要がないPDFビューアをクラウドに構築したいと考えていました。Gits氏は次のように説明します。「顧客のPDFが2GBあることもあります。UIを調べて、ライブプレビューを確認する場合、拡大してさまざまな詳細度で表示し、色版などを確認できることが必要です。私たちはバックグラウンドにあるPDFにこのような機能がほしいと考えました。現在は、PDFはURLからストリーミングされ、動的にサムネール表示されるようになりました」
スケーラビリティ
Gits氏は次のように述べています。「Alpine Linuxはプラットフォームの1つに過ぎないと思われるかもしれませんが、インフラストラクチャの拡張という点で、Alpine Linuxへの移行は大きな意味がありました。HP Site Flowは、動的に拡張するWorkforceというプラットフォーム上で動作し、注文量の急な変化にも対応します。つまり、4つのボックスが常駐して処理を行っているわけではなく、現在必要なものに基づいてPDF変換を実行するコンテナベースのプロセスを1件から数千件へと拡張します。そのために、「ワーカー」と呼んでいるこのプロセスは、できる限り軽量で、小規模で、効率的であることが重要です。これによって数千のワーカーを1分で実行できるのです」
Nir Gilon, Cloud Engineering Manager, HP Inc“I see Mako as a fantastic tool in our toolbox that we can very quickly implement. For example, we’ve recently been looking at PDF complexity - we know we can grab Mako and look at how complex a particular PDF file is. Mako tells us how such complexity will impact our system and what the resulting requirements will be for us to go ahead with that process and we can start to map that. We couldn’t do that without Mako.”
メモリ使用率とCPUパフォーマンスの向上
Makoのプロダクトマネージャ、David Stevensonは次のように述べています。「HPが求めていたのは、徹底的にパフォーマンスに重点を置くことでした。例えば、革新的なキャッシュ戦略によってコンテンツの再利用状況を改善し、ランタイムメモリの使用量を削減することで、数時間かかっていた処理を数分にまで短縮できたものもあります。これにより、以前なら使用可能なメモリを使い果たしていたような、数万もの複雑なページを含む大規模なジョブの処理が可能になりました」
Enhanced Productivity Mode
また、HPとMakoチームは共同で、ジョブがEnhanced Productivity Mode (EPM)を使用した印刷に適しているかどうかを自動的に評価する新機能を導入しました。EPMは、 3色(CMY)のみを使用するカラー(CMYK)印刷ジョブのことで、CMYの3色を重ねてブラック版を生成します。PDFがEPMの使用に適しているかどうかを判断するために、MakoはEPMに使用されているものと同じ独自のカラーマネジメントをRIPによって適用します。これにより、そのPDFを詳細に調査して、さまざまな色版、色の使用、濃度を細かく分析することが可能になります。Gits氏は次のように続けます。「EPMは消耗品のコストを大幅に削減し、カラーを多用するジョブの生産性を33%向上させます。ジョブがRIPに到達する前にわかっていれば、EPMジョブを管理し、適切に課金することができます。これは非常に有益なプロジェクトで、Makoなしでは実現できませんでした。実現できたのは、両社のコラボレーションがあったからです」
Makoだけではない
Gits氏は次のように付け加えています。「Makoだけでなく、 チームの対応も素晴らしいものでした。このプロジェクトで一番良かったのは、Global Graphics Softwareと協力できたことです。このようなことを試みたいというメッセージを私たちが送信すると、すぐに適切な相手からの電話があり、調査してもらえました。これはとても大きなメリットでした。Global Graphics Softwareのチームの支援がなければ、この数年間の成果は成し得ませんでした」
結果
HP Site Flowは、優れた特長を備えたフル機能の製造実行システムであり、ユーザーの生産性と収益性の向上を可能にします。
現在HP Site Flowワークフローでは、PDFファイルの90%をMakoが処理しています。Makoはファイルを分析し、各PDFジョブで達成可能なライン速度を正確に予測して、プリンタ用にジョブを最適化します。
MakoのPDFファイル最適化プロセスによって、フルエンジンスピードでRIP処理できるジョブの割合が増加し、印刷サービス業者はより多くのジョブを高速で印刷できるようになり、生産性が向上しました。
HP Graphics Solutions Portfolioの説明
HP Graphics Solutions Portfolioは、ブランドおよび印刷サービス業者向けのツールスイートを提供します。中核となるのは、Brand CentreとSite Flowです。Site Flowは印刷サービス業者向けの製造実行システムで、大規模な印刷プロダクションの自動化と、ジョブのキャプチャから出荷までの制御を可能にします。Brand Centreは、出版社、コンテンツ所有者、PSPに同様に、顧客の注文の取り込みと追跡を容易にするWebポータルを提供します。
これらのサービスに加えて、Asset LockerやAutoFlowなどのツールも追加されています。Asset Lockerはデジタル資産管理およびプルーフィングソリューションです。一方、AutoFlowは複雑で手間のかかるファイルの準備を自動化し、作業、コスト、時間を削減するシンプルなUIを提供します。
HP Graphics Solutions Portfolioは、注文管理から印刷、出荷まで、印刷プロセスのすべての段階を通じて最適化と収益化の手段を提供します。